広島大学生物圏科学研究科瀬戸内圏フィールド科学研究教育センター竹原ステーションが位置する瀬戸内海に面した町、広島県竹原市にはすばらしい自然が残っています。ここでは瀬戸内海でも有数な規模の干潟と藻場、閉鎖的な海ならではの穏やかな海、これらの自然について紹介しています。
軟体動物 (貝類) |
節足動物 (甲殻類) |
魚類 | 星口動物 (ホシムシ類) |
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ヒザラガイ マツバガイ ヒラスカシガイ イボキサゴ ゴマフダマ イボニシ アカニシ ホトトギスガイ アサリ テナガダコ |
ハクセンシオマネキ マメコブシガニ ヤマトオサガニ アシハラガニ ヒライソガニ イソガニ ケフサイソガニ イシガニ キンセンガニ アミメキンセンガニ ソバガラガニ ヘイケガニ タイワンガザミ オサガニ テナガコブシ イソテッポウエビ フナムシ |
アゴハゼ アカオビシマハゼ ギンポ |
スジホシムシモドキ |
ユムシ動物 | 環形動物 (多毛類) |
棘皮動物 | |
ユムシ セトウチドチクチユムシ ミドリユムシ |
ゴカイ | ヒモイカリナマコ | |
○参考文献 ・今原幸光.有山啓之.石田惣.伊藤勝敏.大谷道夫.竹之内孝一.鍋島靖信.波戸岡清峰.花岡皆子.山西良平.2011.写真でわかる磯の生き物図鑑.トンボ出版 ・日高敏隆監修 奥谷喬司/武田正倫/今福道夫編集 2002 日本動物大百科<全11巻> 第7巻 無脊椎動物 平凡社 ・吉良哲明.1959.原色日本貝類図鑑.増補改訂版.保育社 ・蒲原稔治.1961.原色日本魚類図鑑.保育社 ・波部忠重.1961.続原色日本貝類図鑑.保育社 ・岡田要.1965.新日本動物図鑑〔上〕.北隆館 ・内海富士夫. 1969.原色日本海岸動物図鑑.保育社 ・西村三郎.山本虎夫.1974.海辺の生物.保育社 ・武田正倫.1982.原色甲殻類検索図鑑.北隆館 ・波部忠重.1983.学研生物図鑑 貝Ⅱ.学習研究社 ・岡村収.尼岡邦夫. 1997.日本の海産魚.明光社 ・逸見泰久・伊谷行・岩崎敬二・西川輝昭・佐藤正典・佐藤慎一・多留聖典・藤田喜久・福田宏・久保弘文・木村妙子・木村昭一・前之園唯史・松原史・長井隆・成瀬貫・西栄二郎・大澤正幸・鈴木孝男・和田恵次・渡部哲也・山西良平・山下博由・柳研介. 2014.日本の干潟における絶滅の危機にある動物ベントスの現状と課題日本ベントス学会誌69: 1-17. ・伊谷行・佐藤正典・鈴木綱孝雄・多留聖典・西川輝昭・逸見泰久・柳研介和田恵次・渡部哲也. 2012. その他の分類群. 「干潟の絶滅危惧動物図鑑 (日本ベントス学会: 編)」 東海大学出版会. 228-239. ・有吉英治 (2016) 広島県のカニ類他図鑑. 株式会社 中本本店. 広島県. | |||
干潟は生き物たちだけの重要な場所というわけではありません。われわれ人間達にとってもかけがえのない場所です。人間たちの活動によって、排出された有機物質(栄養塩)が海を汚染(富栄養化)し、赤潮が発生することを抑制する効果が干潟にはあることが分かってきました。つまり、干潟の生物たちが海を浄化してくれているのです。これからの海洋の汚染(富栄養化)を解決していくには、干潟の存在が不可欠であるともいえます。 これまで、われわれ人間たちは、干拓や埋め立てで干潟を開発していきました。干潟が消滅してしまうと、そこに住んだり、利用したりしている生物たちはどうなってしまうのでしょうか?今、日本の各地で干潟が減少しています。それにともない、そこに生息している生物たちも死に絶え、鳥達もやってこなくなりました。ここでは、このような現状である干潟について少しでも理解していただくために、干潟の生物を紹介しています。 |
潮間帯の岩場に生息する。潮が満ちると岩をはって藻類を食べる。北海道南部より九州南部、韓国に分布。
磯の潮間帯下部から下に生息する。夜間に行動する。房総半島、男鹿半島から九州南部に分布。
採集日: 2020年5月8日 採集地: 竹原市 (広島県) 殻から軟体部がはみ出ナメクジ様。殻頂の穴 (頂孔) は中央部やや後ろに位置し、そこから水管を突き出す。スケールバーは1cm
浅い内湾に生息する。キサゴと類似しているが、本種の方が滑層面積が広く殻の半径より大きい。外敵から襲われた際には、飛び跳ねて逃げる。東北~九州に生息する。
採集日: 2020年6月24日
採集地: 竹原市 (広島県)
殻は厚く、白色で暗紫褐色の小斑点が多数ある。蓋には外縁に沿って2本の細溝がある。潮間帯から水深30 mの砂泥底に生息する。先端がとがったもので肉を繰り出し食べることから“ヘソクリ”とも呼ばれる。スケールバーは1 cm。
潮線内外の岩礁に生息する。レイシガイと共に環境汚染による生殖奇形が問題となっている。北海道南部以南、台湾に分布。
浅海の砂泥地に棲息する。殻の口の内面部分が赤いことに由来する。日本における水産重要種。北海道南部から中国まで分布。
干潟の砂泥中に生息しており、特に富栄養化の進んだ海に多い。足糸を有し、磯または岩礁に着生する。北海道以南に分布。
採集日: 2020年6月6日
採集地: 竹原市 (広島県)
殻長約4 cm。浅海の砂泥地に生息する。殻の色彩は極めて変化に富む。ヒメアサリRuditapes variegata (Sowerby, 1852) と比較して、外套湾入が深い。東北以北では夏季に1度、関東以南では春季と秋季の2度産卵する。日本における水産重要種の一つ。スケールバーは1 cm。
採集日: 2020年9月17日
採集地: 竹原市 (広島県)
体は細長く、体表はほぼ平滑。眼上棘はない。腕は細長く、強い不等長。全国の下部潮間帯から水深400 mまで生息する。湾内の砂泥地に多く、干潟などでも見られる。
泥を若干含んだ砂地で,底質がやや固い所に生息する。 オスの白色のはさみを体の横から大きく振り上げて前へおろす動作が、白扇が潮を招いているように見えることが名前の由来。伊勢湾以南から九州西北岸、韓国に分布。シオマネキ属の中でも最も広い分布をもつが、近年絶滅が危惧されている。
内湾の干潟に多いカニで、甲羅が丸く盛り上がっている。カニではめずらしく前方にも進むことができる。岩手県以南の日本各地および韓国、中国北部に分布。
河口近くのやわらかい泥の干潟に集団で生息する。甲羅は横に長く、ハサミは両方とも太め。目は非常に長く、水面上に目だけを出していることがよくある。青森県以南の日本各地、台湾、韓国南部、中国、シンガポールに分布。
河口付近のアシ原や河岸に多く生息する。穴を掘って暮らしており、何十匹もの群れでいることが多い。青森県から九州、韓国および中国北部に分布。
岩礁海岸で普通に見られるカニで、岩の隙間や転石の下に生息する。北海道南部以南、台湾、韓国、中国北部に分布。
内湾または岩石まじりの磯の潮間帯にごく普通にみられるカニ。岩の隙間や転石の下に見られる。北海道以南、韓国、中国に分布。
内湾の砂泥質の磯に多くみられるカニ。他の生物があまりみられない汚れた干潟でも生息できる。オスのみに、両方のはさみにやわらかい毛の房があるのが特徴。北海道以南、韓国、中国北部、台湾に分布。
岩礁、干潟から水深30mにみられるカニ。磯では低潮帯の大きめの石の下などで見られ、河口や干潟では点在する石の下に穴を掘って暮らす。殻は固いものの、食用にされ美味とされる。東京湾以南、韓国、中国、台湾に分布。
採集日: 2020年9月6日
採集地: 生野島 (広島県)
甲面には多数の小黒点が見られる。ハサミ脚 (鉗脚) 以外の歩脚の指節は、全て平たくヒレ状。潜砂および遊泳力に優れる。鉗脚の掌部外面基部に櫛状の棘を持つ。カラッパ科に分類されていたが、キンセンガニ科にまとめられている。東京湾以南の砂浜海岸に分布する。
採集日: 2020年11月6日
採集地: 小豊島の南東 (香川県)
撮影者: 西田 雄介
キンセンガニ同様、鉗脚以外の歩脚の指節は全て平たくヒレ状。キンセンガニと比べ、本種は甲面に特徴的な網目状模様をもつ。また、鉗脚の掌部外面基部に棘がない。東京湾以南の太平洋側、および秋田県以南の日本海側の砂底地に生息する。スケールバーは1 cm。
採集日: 2020年9月19日
採集地: ハチの干潟 (広島県)
撮影者: 西田 雄介
鉗脚および歩脚共に極めて細く、長い。甲は三角形で、甲面は平滑。甲の形がソバの実の殻 (蕎麦殻) に似ていることに由来する。
甲殻綱 十脚目 ヘイケガニ科
採集日: 2020年11月8日
採集地: 宇野沖 (岡山県)
撮影者: 西田 雄介
鉗脚は小さい。歩脚は強い不等長。第1、第2歩脚は著しく長く扁平。前節から指節にかけて両縁に軟毛を持つ。第3、第4歩脚は細く短い。前節基部内側に突起があり、指節は強く曲がる鉤状をしており、その先端は鋏状になる。水深10-30 mほどの砂泥地に生息する。短い第3、第4歩脚で二枚貝の殻、木片、ウニの仲間であるカシパン類の殻などを背負うことで身を隠す。甲は丸みをおびた台形で、甲面には特徴的な明確な溝がある。本種 (平家蟹) の名前は、この甲面模様が恨めしそうな人面様に見え、また瀬戸内海や九州沿岸で多く見られることから壇ノ浦の戦いで敗れた平家の名前に由来する。
甲殻綱 十脚目 ワタリガニ科
採集日: 2020年9月19日
採集地: ハチの干潟 (広島県)
撮影者: 西田 雄介
甲は横長の六角形で前側縁には歯状の突起が並び横縁は大きく尖り突出する。甲面は顆粒で覆われ、暗緑色の地に白色の雲紋様を呈する。鉗脚の長節に3本の明確な棘が見られ、近縁のガザミ Portunus trituberculatus (4本) とこの点で見分けることができる。第4歩脚は平たくヒレ状の遊泳脚。甲幅は最大で15 cmほどになる大型のカニ。
採集日: 2020年9月19日
採集地: ハチの干潟 (広島県)
撮影者: 西田 雄介
甲は円筒形で、近縁種のヤマトオサガニ Macrophthalmus japonicusよりも細長い。歩脚長節の前縁には長い軟毛が密生する。鉗脚の大きさは雌雄で異なり、雌のそれは小さい。写真は雌個体。スケールバーは1 cm。
採集日: 2020年11月6日
採集地: 高見島の東 (香川県)
撮影者: 西田 雄介
甲は縦に長い卵型で甲面は球形。甲縁は丸い顆粒で縁取られる。甲尻から1本の大棘と2本の小棘が水平に突出する。歩脚と比較し鉗脚は著しく長く大きい。水深30-150 mの砂泥地に生息する。スケールバーは1 cm。
磯でごく普通に見られる種で、小石まじりの砂底の岩の下などに棲む。山形県以南、相模湾以南の西太平洋、インド洋に分布。
海岸にごく普通に見られる。完全な陸上性で水中では生活できない。雑食性で腐肉なども食べる。本州以南、中国、インド、北アメリカの太平洋岸と大西洋岸に分布する。
岩礁の潮溜まりや浅海に多く見らる。潮溜まりなどの閉鎖環境で高温、高塩分や低塩分などに耐え、生命力が強い。汽水域に進入することもる。仔魚期は、岸よりのガラモ場などの中層を漂っている。北海道から種子島、朝鮮半島に分布。
海水域から内湾や河口の塩分のやや高いところに多く生息するが、汽水域でみられることもある。岩礁や湾内の障害物を利用して産卵し、オスが卵を保護する。北海道から九州、朝鮮半島、中国に分布。
外海から内海のテトラポットや岩礁域、藻場と広く生息する。肉食性。見た目はへびのようだが、意外と美味で天麩羅等にして食される。北海道から九州まで分布。
体幹の長さは通常10~20cmであるが40cmを超えるものもある。不透明な皮膚を通して、体幹と平行に走る18~25本の縦筋束を見ることが出来る。陥入吻には乳頭状突起があり、陥入物を環状に取り巻く。表皮の色は生息地の基質の状態によって異なり、淡黄白色、黄褐色、灰褐色、灰色などさまざまに変化する。
似た名前を持つスジホシムシ(Sipunculus nudus)は陥入物の乳頭状突起がまばらな環状にならないこと、体幹が縦横に走る筋肉の交差によって基盤目状の皺になることなどで本種と区別できる。
・すみ場所:両種とも潮間帯下部から潮下帯の岩の間に溜まった砂中、砂底などに生息する。
・分布 :両種とも陸奥湾以南
環太平洋の冷温水域の潮間帯~浅海に生息。胴体長50cmに達する種があるが、その場合でも吻は1cm程度。
体壁の筋肉は外側から、環筋、縦筋、斜筋の順に並ぶ。腸の最後部は、壁が薄くなって呼吸器官となる。はっきりした血管系をもたない。
体幹長は約8 -10 cm。日本固有種であり、生息地は三崎 (神奈川県)、浜名湖 (静岡県)、瀬戸内海(広島県)。本種は浦賀水道水深 330 m で採集されたオウストンミドリユムシThalassema owstoni と同種とされていたが、別属の未記載種であることが判明した。スケールバーは1cm。
干潟・浅海域の砂泥中に生息する。幹長は約8-10 cm。スケールバーは1cm。
淡水の流入する海岸や河口の底か砂や泥の場所に生息する。冬の夜間大潮時に生殖のために群泳する。釣り餌としてよく利用される。
採集日: 2020年6月24日
採集地: 竹原市 (広島県)
体は表に細長く、半透明でやや黄色を帯びる。東北以南の潮間帯下部の砂泥底中に生息する。スケールバーは1 cm。
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