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魚類の寄生虫
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注意:本ページは随時更新しています.種名は使用者の責任で使用してください.写真の著作権は放棄していません.画像・本文に撮影者・作成者の記名が特にない場合,西田雄介.


最終更新日:2021/10/31

目次
マダイの寄生虫
キジハタの寄生虫
トカゲエソの寄生虫
サッパの寄生虫
キュウセンの寄生虫
ブリの寄生虫
スズキの寄生虫
クサフグの寄生虫

マダイの寄生虫

マダイ Pagrus major

マダイ 寄生虫

等脚類 Isopoda

ウオノエ科 Cymothoidae
Ceratothoa verrucosa タイノエ
マダイ 寄生虫 タイノエ 寄生状況 マダイ 寄生虫 タイノエ 寄生状況拡大図
マダイ 寄生虫 タイノエ 雌成体拡大図

 マダイの口蓋に寄生する.雌は保育嚢を持ち(画像下),この中で卵が孵化しマンカ幼生を放出する.本種の寄生によってマダイが死亡することはないが,寄生部位の口蓋骨が変形したり成長障害を引き起す.また,マダイに寄生する単生類の一種マダイヤツデムシがタイノエの体表に付着していることもよく見られており,タイノエがマダイヤツデムシの寄生を助長している可能性も示唆されている.(参考文献)
 雌雄のつがいで寄生しており,その様子から鯛之福玉と呼ばれ夫婦円満の縁起物とされる.(上図右)
・ウオノエに関しては,こちらも参照.



参考文献:Ohtani, T., Kawamoto, I., Chiba, M., Kurono, N., Matsuoka, S., & Ogawa, K. (2021). Ceratothoa verrucosa (Isopoda: Cymothoidae) Infection in the Buccal Cavity of Red Seabream Caught in Iyo-Nada, Western Japan, with Some Notes on Its Co-infection with Choricotyle elongata (Monogenea: Diclidophoridae). Fish Pathology, 56(2), 43-52.

寄生性カイアシ類  Parasitic copepods

シフォノストム目 Siphonostomatoida 

ウオジラミ科 Caligidae
Caligus sclerotinosus ゴウシュウウオジラミ
CEO CEO
CEO

 本種はオーストラリアで記載された種だが,日本では1999年に大分県のマダイ養殖場で初めて報告された.その後も三重県や愛媛県など日本各地から報告があり,さらには韓国のマダイ養殖場からも報告があった.しかし,天然のマダイからは発見されていないためマダイ種苗の輸出入など何らかのルートでオーストラリアから移入した可能性が示唆されている.

Caligus laticaudus シイノウオジラミ
マダイ 寄生虫 シイノウオジラミ マダイ 寄生虫 シイノウオジラミ寄生状況

鰓蓋の裏側に寄生する(右図).和名は本種を記載した椎野季雄博士に因む.

Caligus pagrosomi マダイウオジラミ
マダイ 寄生虫 マダイウオジラミ マダイ 寄生虫 マダイウオジラミ寄生状況

鰓に寄生する.(右図)

Lepeophtheirus sekii 
マダイ 寄生虫 サケジラミ属雌 マダイ 寄生虫 サケジラミ属雄

マダイ 寄生虫 サケジラミ属

体表に寄生する.
図は,左は成体雌.右はpreadultと呼ばれる成長段階.

ナガクビムシ科 Lernaeopodidae
Clavellotis dilatata コブツキナガクビムシ
マダイ 寄生虫 コブツキナガクビムシ マダイ 寄生虫 コブツキナガクビムシ寄生状況

口腔内に寄生する(右図).
左図撮影:柚村七々実

Lernaeopodidae sp.
マダイ 寄生虫 ナガクビムシ マダイ 寄生虫 ナガクビムシ

鰭に寄生する(右図).
左図撮影:柚村七々実

ヒトガタムシ科 Lernanthropidae
Lernanthropus atrox タイノヒトガタムシ
マダイ 寄生虫 ナガクビムシ

鰓に寄生する.

エラノミ科 Hatschekiidae
Hatschekia pagrosomi マダイノエラノミ
マダイ 寄生虫 エラノミ マダイ 寄生虫 エラノミ寄生状況

鰓に寄生する(右図).

キクロプス目 Cyclopoida

エラジラミ科 Bomolochidae
Bomolochidae gen. spp. エラジラミ科の一種
マダイ 寄生虫 エラジラミ マダイ 寄生虫 エラジラミ

鰓室内に寄生する(右図).

扁形動物門 Phylum Platyhelminthes
単生綱 Class Monogenea

単後吸盤亜綱 Subclass Monopisthocotylea
ハダムシ目 Capsalidea

ハダムシ科 Capsalidae
Benedenia sekii マダイハダムシ
マダイ 寄生虫 ハダムシ

体表に寄生する.本種が養殖マダイに寄生することで,ハダムシ症を引き起こす.寄生部位が白くすれたようになり,細菌感染症を引き起こす可能性がある.

多後吸盤亜綱 Subclass Polyopisthocotylea
ツカミムシ目 Mazocraeidea

ツカミムシ科 Diclidophoridae科
Choricotyle elongata マダイヤツデムシ
マダイ 寄生虫 ヤツデムシ マダイ 寄生虫 マダイヤツデムシ

口腔内に寄生する.8個の把握器が後固着盤にあり,この把握器でマダイの口腔内や鰓に寄生する
参考文献:新田理人, 菅孔太朗, & 長澤和也. (2019). 鹿児島湾産マダイに寄生していたマダイヤツデムシ (新称) Choricotyle elongata (扁形動物: 単生綱) とそのタイプ標本の観察. Nature of Kagoshima, 46, 255-258.

Microcotylidae科
Bivagina tai マダイソウチツムシ
マダイ 寄生虫 ビバギナ

鰓に寄生する.後固着盤に多数の把握器が並ぶ.本種がマダイに大量寄生すると鰓が白色になるほど貧血になり死に至ることもあるためマダイ養殖ではしばしば問題になる(ビバギナ症).
参考文献:藤田矢郎, 依田勝雄, 玉河道徳, & 与賀田稔久. (1969). 養殖マダイに寄生する Microcotyle tai の駆除. 魚病研究, 3(2), 53-56.

キジハタの寄生虫

キジハタ

キジハタ 寄生虫

 背側にイカリムシモドキの寄生を多数受けたキジハタ

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ヒジキムシ科 Pennellidae
Lernaeenicus ramosus イカリムシモドキ
キジハタ 寄生虫 ペンネラ イカリムシモドキ 超寄生 キジハタ 寄生虫 ペンネラ イカリムシモドキ
キジハタ 寄生虫 ペンネラ イカリムシモドキ

 魚体へ頭部を差し込んで寄生する.(下図 上側が頭部 撮影:柚村 七々実)
 上図左はキジハタに寄生するイカリムシモドキの体表にヒドロ虫が超寄生している.

トカゲエソの寄生虫

トカゲエソ

トカゲエソ 寄生虫

寄生性カイアシ類

キクロプス目 Cyclopoida

カクレムシ科 Philichthyidae
Sarcotaces sp. コブトリジイサン属の一種
CEO CEO
CEO CEO

 口腔内の皮下に嚢胞を形成し,その内部に雌雄で寄生する(上図左の矢先の黒みを帯びた部分).雌は袋状の体で(画像:上図右・下図左),雄は雌に対してかなり小さい(矮雄.画像:下図右).雌の体内には宿主の血液由来と思われる黒い液体が詰まっている.
下2画像は雌(左)・雄(右)の走査電子顕微鏡写真.(画像提供:新田理人 博士)

サッパの寄生虫

サッパ

サッパ 寄生虫

等脚類 Isopoda

ウオノエ科 Cymothoidae
Anilocra clupei サッパノギンカ
サッパノギンカ 寄生虫 寄生状況
サッパノギンカ 寄生虫 寄生状況 サッパノギンカ 寄生虫 寄生状況
サッパノギンカ 寄生虫 寄生状況

  サッパの背に寄生する.旧称「サッパヤドリムシ」.
サッパの寄生部位はサッパノギンカの食害のため外傷がある.
参考文献:山内健生. (2016). 日本産魚類に寄生するウオノエ科等脚類. Cancer, 25, 113-119.

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ウオジラミ科 Caligidae
Caligus undulatus ウキウオジラミ
CEO CEO

 ウキウオジラミは,その名の通りプランクトンとして見つかったウオジラミである(画像左.撮影者:縄田将己).長年,宿主が不明のままであったが,2019年に竹原市的場海岸のサッパから見つかり,初めて宿主がサッパであると判明した(下記論文を参考).その後も,コノシロからも発見された.サッパの体表には,多数のカリムス幼体の寄生が見られた.(画像右.撮影者:西田雄介)

参考:Ohtsuka, S., Nawata, M., Nishida, Y., Nitta, M., Hirano, K., Adachi, K., Kondo, Y., Venmathi Maran, B. A., & Suárez-Morales, E. (2020). Discovery of the fish host of the ‘planktonic’ caligid Caligus undulatus Shen & Li, 1959 (Crustacea: Copepoda: Siphonostomatoida). Biodiversity Data Journal, 8, e52271.

キュウセンの寄生虫

キュウセン

キジハタ 寄生虫

 キュウセンのメス.

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ナガクビムシ科 Lernaeopodidae
Parabrachiella bera ベラナガクビムシ
キュウセン 寄生虫 キュウセン 寄生虫 ナガクビムシ

 鰓に寄生する.(左図撮影:柚村 七々実)

ブリの寄生虫

ブリ

ブリ

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ウオジラミ科 Caligidae
Caligus spinosus ブリウオジラミ
キュウセン 寄生虫

 鰓(鰓弓・鰓耙)に寄生する.1967年に長崎県五島地方で,本種が養殖(畜養)ブリに大量に寄生し,約1万尾のブリが斃死するという被害を与えた.

参考文献:藤田矢郎, 依田勝雄, & 字賀神勇. (1968). 蓄養ブリに寄生するカリグスの駆除. 魚病研究, 2(2), 122-127.

スズキの寄生虫

スズキ

スズキ

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ウオジラミ科 Caligidae
Caligus epinepheli ハタウオジラミ
スズキ 寄生虫 スズキ 寄生虫

 鰓・口腔内に寄生する(左図).スズキの他,マハタやキジハタ,セトダイなどからも報告されている.
右図左:オス,右:メス.

参考文献:Nagasawa, K., Uyeno, D., & Tang, D. (2010). 日本産魚類に寄生するウオジラミ属カイアシ類の目録 (1927–2010 年). Bull. biogeogr. Soc. Japan, 65, 103-122.

クサフグの寄生虫

クサフグ

クサフグ

寄生性カイアシ類

シフォノストム目 Siphonostomatoida

ウオジラミ科 Caligidae
Caligus fugu セトウオジラミ
フグ 寄生虫 フグ 寄生虫

 体表に寄生する.和名は参考文献①に準じた.クサフグ以外にも,ヒガンフグ,コモンフグ,トラフグなどに寄生する.体内にフグ毒であるテトロドトキシンを蓄積することが知られているが,卵巣には蓄積しない(参考文献②).また,単生類のUdonella fuguが体表に超寄生することもある.(右図.クリックすると拡大図が別タブで開きます.)

参考文献:
①横山博, & 長澤和也. (2014). 養殖魚介類の寄生虫の標準和名目録.

②Ikeda, K., Venmathi Maran, B. A., Honda, S., Ohtsuka, S., Arakawa, O., Takatani, T., Asakawa, M., & Boxshall, G. A. (2006). Accumulation of tetrodotoxin (TTX) in Pseudocaligus fugu, a parasitic copepod from panther puffer Takifugu pardalis, but without vertical transmission--using an immunoenzymatic technique. Toxicon : official journal of the International Society on Toxinology, 48(1), 116–122. https://doi.org/10.1016/j.toxicon.2006.04.019

ナガクビムシ科 Lernaeopodidae
Parabrachiella hugu フグナガクビムシ
寄生虫 フグナガクビムシ 寄生虫 フグナガクビムシ

口腔内に寄生する.養殖トラフグに寄生することもある.(右図撮影:柚村七々実)

キクロプス目 Cyclopoida

ツブムシ科 Chondracanthidae
Brachiochondria pinguis ウデツブムシ
寄生虫 ウデツブムシ 寄生虫 ウデツブムシ

口腔内に寄生.歯の後ろなどによく寄生している.

鰓尾類

チョウ目

チョウ科 Argulidae
Argulidae gen. sp. チョウ科の一種
寄生虫 ウデツブムシ

体表に寄生する.クサフグから得られたことから,クサフグウミチョウArgulus kusafuguの可能性がある.

参考文献:齋藤暢宏, 山下浩史, 近藤裕介, 大塚攻, & 長澤和也. (2011). 魚類寄生性甲殻類クサフグウミチョウの第 2 例目の採集記録. 日本生物地理學會會報= Bulletin of the Bio-geographical Society of Japan, 66, 243-247.

バナースペース

水産実験所

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