カイアシ類は、現在11目(プラティコピア目、カラヌス目、キクロプス目、ゲリエラ目、ハルパクチス目、ミソフリア目、モンストリラ目、ポエキロストム目、シフォノストム目、Thaumatopsylloida)が報告されていますが、ゲリエラ目を除く10目では海産浮遊性種がみられています。
各種の生息範囲は、種々の環境要因によって分布が限定されており、水平的には汽水性、内湾性、沿岸性、外洋の区別が、鉛直的には極表層性、表層性、中層性、漸深海層性、深海層性、超深海層性、近底層性の区別がされています(図1)。寒帯〜亜熱帯に生息する汽水・内湾・沿岸性カラヌス目の一部は、生息に不適当な時期を卵・コペポディット幼体として休眠するものもいます。
また浮遊性カイアシ類は、水中を漂っているだけでなく、顕著な日周鉛直移動(図2)をするもの、繁殖期に合わせて季節的鉛直運動(図3)をするものがいます。いずれも移動距離は数百mに及ぶこともあります。まず、日周鉛直移動(図2)とは、昼間は深層で過ごし、夜になると表層に移動することです。表層は餌が豊富なのですが、昼間は魚などの捕食圧が高いので、捕食されるのを避けるために深層で過ごします。夜になり、捕食者に見つかりにくくなったら、餌を食べに表層に移動してくるのだと考えられています。
図4. カイアシ類のノープリウス幼生(原図) 図5. カイアシ類のコペポディット幼体(原図)
季節的鉛直移動(図3)とは、植物の大増殖に合わせて生殖活動と移動を行うことです。早春になると湧昇がおき、深海の栄養塩が表層に運ばれ、それによる植物プランクトンの大増殖(ブルーム)の直前にカイアシ類は深層で産卵します。そこから孵化したノープリウス幼生は、成長をしながら植物プランクトンの多い表層まで浮上し、植物プランクトンの繁殖が終了する夏までにコペポディットX期まで成長します。そして、植物プランクトンの栄養を体内に蓄え、植物プランクトンの生産力の低い冬を深層で過ごします。早春にコペポディットX期から脱皮して成体となり、産卵を行います。この生活環を一年で完結させる種と数年にわたって完結させる種がいます。また、浅海では、昼間に限って「蚊柱」のような集群を形成し、捕食者である魚類に対して目くらましをするものも知られています。
図3. 季節的鉛直移動
CT〜Y:コペポディットT〜Y期
NT〜Y:ノープリウスT〜Y期
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