原生生物の仲間として、繊毛虫がいます。繊毛構造をもっています。このよう繊毛を持つ原生動物を繊毛虫といいます。隔口類繊毛虫とは宿主にシストの状態で付着する広い意味での寄生性繊毛虫です。宿主としては主に、カイアシ類、カニ類、エビ類などの甲殻類が報告されています。
複雑な生活史をもち、ステージによって形態、機能は大きく異なります。多くの種は宿主の粘液や脱皮殻などを食べ宿主にほとんどダメージを与えません。しかし、中には宿主を殺してしまうものもいます。
ここでは、広島県竹原市沿岸で採集できるカイアシ類に付着しているVampyrophrya pelagica の生活史について紹介します。この繊毛虫は、宿主であるカイアシ類が傷つくと、傷口から外骨格の中に入り、その組織を食べカイアシ類を殺してしまいます。Vampyrophrya
pelagicaには4つの形態的、機能的に異なるステージがあります。
(1)シストを形成し付着するフォロント(phoront) ※参考文献 |
繊毛虫はシストの状態でカイアシ類に付着しています。このステージをフォロントといいます。 | |
図5.カイアシ類に付着するフォロント(原図) |
図6.拡大したフォロント(原図) |
フォロントは直径約15μmの楕円体で約2.5μmの柄がついている"ぼんぼり"のような形をしています。カイアシ類の付属肢の付けねに付着していることが多く、背側にはあまり付着は見られません。 図7.フォロント(走査型電子顕微鏡写真,原図) |
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フォロントの内部は、シスト膜下にすでに繊毛が完成しており、いつでもトロフォントとしてシストから出ることができるようになっています。 |
摂食ステージがこのトロフォントです。フォロントが付着していたカイアシ類が傷付いた時や、カイアシ類がヤムシに捕食された後、シストからトロフォントが出てきます。トロフォントは、カイアシ類の外骨格の中に入り、組織を食べます。 図9.カイアシ類外骨格中のトロフォント(原図) |
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ヤムシの消化管の中で、トロフォントはカイアシ類の組織を食べます。ヤムシはトロフォントを生きたまま排泄物として排出します。 図10.ヤムシの排泄物中のトロフォント(原図) |
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シストから出てきたトロフォントは直径30μm程度の大きさですが、カイアシ類の組織をどんどん食べ、次のステージに移るころには倍の直径50μm程度になります。図11がトロフォントの走査型電子顕微鏡写真です。表面に生えている毛を繊毛といい、繊毛の並んでいる列を繊毛列といいます。この繊毛列の並び方で種を同定することが出来ます。 図11.トロフォント(走査型電子顕微鏡写真,原図) |
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図12は摂食中のトロフォントの切片です。右側がトロフォント細胞です。細胞内に小さい膜構造がたくさんみられます。これは、カイアシ類の組織を食べ急速に大きくなるための膜の供給源となっていると思われます。 図12.摂食中のトロフォント(透過型電子顕微鏡写真,原図) |
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図13は、摂食後のトロフォントの切片です。さきほどの膜構造は見られなくなり、細胞のほとんどを食胞が占めています。 図13.食後のトロフォント断面図(透過型電子顕微鏡写真,原図)FV 食胞 MA 大核 LB 脂質 |
カイアシ類の組織を十分に食べると繊毛虫はカイアシ類の外骨格の中で、フォロントとは異なる分裂するためのシストを作ります。この時期をトモントといいます 図14.カイアシ類外骨格中のトモント(原図) |
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トモントは直径約60μmの楕円体をしていて、シストを作ってしばらくすると、分裂を始めます。2細胞から20細胞以上に分裂します。 |
分裂し動いていた細胞がシストから出てきます。このステージがトミーテです。トミーテは4つのステージの中で一番遊泳能力が高いステージです。 図16.シストから出るトミーテ(原図) |
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トミーテは約25×20μmの紡垂体で、シストから出た後、トミーテはカイアシ類の外骨格の中を泳ぎ回っていますが、やがて外骨格が壊れているところや、触角など壊れやすいところから外へ出ていきます。 |
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