寄生性カイアシ類はさまざまな方法で宿主に取り付いています。寄生虫が宿主から離れることは、自らの死を意味しているので、絶対に離れないような工夫が形態にも現れています。 (各付属肢の詳細はこちらです。)
第二触角を鉤状に変形させて、宿主の鰓や鰭などを抱える、組織を貫くなどして寄生します(左図)。
図3. 第二触角による寄生。
宿主の組織に吸盤状の頭部または頭胸部クチクラを押し付け、吸着すると同時に、鉤状に変形した第二触角で宿主の組織を貫きます。宿主の口腔内や鰓腔内、鰓蓋の内側などに寄生しています。(図4)
図4. 頭部及び頭胸部と第二触角による寄生。
この方法で宿主に取り付くものはShiinoidae(シイノア科)のカイアシ類だけです。頭部の伸長した吻(rostrum)と変形した第二触角で宿主の組織をつかみます(図5)。)
図5. 第二触角と頭部の吻による寄生。
Eudactylinidae(ユーダクチリーナ科)の寄生性カイアシ類の仲間は宿主に取り付く際に顎脚を使います。右図のように、顎脚の形はさまざまで、大きく鉤状に変形したものや輪を作るように変形したものなどがあります。(図6)
図6. 顎脚による寄生。
第二小顎を大きく伸長させて、その先端を宿主に打ちこみアンカー状にして取り付いています。第ニ小顎の先端の形状はさまざまで、小さなコブ状なものから、船の錨のように大きなものまであります。(図7)
図7. アンカー状の第二小顎による寄生。
この種類の寄生性カイアシ類は、宿主の体表から、心臓やその周辺などの直接血液を摂取できる部位に頭部を侵入しています。寄生虫が血液を摂取することは、宿主の栄養を根こそぎ奪ってしまうので、多数に寄生されると見るからに痩せ細り、最終的には死に至るケースが多いようです。(図8)
図8. 頭部を宿主の組織に侵入させる寄生方法
この種類のもの(図9)は、宿主となる魚類の腹腔内、粘液管などに寄生しています。一部のものはシストと呼ばれる袋の中でオスとメスが一対ずついっしょにいて、生殖や産卵を行っていると考えられています。
図9. Philichthyidae科カイアシ類のメス
(以上の図はKabata, Z. 1979を元に模写)
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