シラスやカタクチイワシなどが食卓にのぼることがありますが、そのときよく目を凝らしてみると腹部が赤くなっているものがいます。実は、その赤い部分は加熱されて赤くなったカイアシ類なのです。シラスやカタクチイワシだけでなく、ほとんどの硬骨魚の、少なくとも稚仔魚は、カイアシ類、特にノープリウス幼生を重要な餌としています。故に海産魚類の仔魚の生残には、餌としてのカイアシ類ノープリウス幼生の密度が重要であるといわれています。マダイ、ブリ、サケ、そしてマグロ、カツオでさえも幼い時期にはカイアシ類を主食とし、サンマ、ニシンは親魚になってもカイアシ類を食べています。北太平洋では、ヒゲクジラ類の重要な餌になっている種もいます。したがって、カイアシ類は私達の食資源を支えているのです。
図11. カイアシ類ノープリウス期(原図)
しかし、カイアシ類は魚類などの餌として重要である一方、私達の生活に直接的、間接的に悪影響を及ぼしています。直接的な悪影響は、人間の寄生虫である線虫、条虫類の中間宿主になっていることです。間接的な悪影響は、水産資源上重要な魚類に寄生する種がいることです。魚類に寄生する種は大変多く、海ではサケ、タラ、サンマ、ホタテガイなどに、陸水ではフナ、ウナギ、キンギョなどに寄生します。宿主あたりのカイアシ類の寄生個体数が少ない場合には、あまり問題はないのですが、大量に寄生を受けると寄生虫に栄養を取られすぎたり、宿主の食欲が減退し、宿主の産卵数に影響が出ます。最終的には、寄生虫により貧血や窒息を引き起こしたり、バクテリアに二次感染したりして死に至ることさえあります。さらに海藻に付着する種では、ワカメの葉に穴を開けたりして商品価値を無くしてしまうものもいます。また、海産浮遊性の肉食種は、仔魚を食べてしまうものもいるので、魚類の生残に大きく関与していると考えられています。
図12. 魚(シイラ)に寄生するカイアシ類(原図)
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